フォーモストブルーシール株式会社の第63期(令和6年12月31日現在)の決算公告が、令和7年3月28日付の官報に掲載されましたので、その概要をピックアップします。
第63期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 3,085百万円 (約30.9億円)
負債合計: 2,241百万円 (約22.4億円)
純資産合計: 844百万円 (約8.4億円)
当期純利益: 88百万円 (約0.9億円)
今回の決算では、当期純利益として88百万円(約0.9億円)が計上されています。資産合計は約30.9億円、負債合計は約22.4億円で、純資産合計は約8.4億円です。利益剰余金は690百万円(約6.9億円)と、資本金100百万円を大きく上回っており、長年にわたり安定した経営を続けてきたことがうかがえます。
事業内容と今後の展望(考察)
【事業内容の概要】
フォーモストブルーシール株式会社は、「アイスがもたらす、笑顔のために」を企業理念に、沖縄県民および国内外の観光客から絶大な人気を誇るアイスクリームブランドです。公式ウェブサイトによると、主な事業は以下の通りです。
アイスクリーム等の製造・販売: 沖縄の気候風土に合わせて開発された、さっぱりとした味わいのアイスクリームを自社工場で製造。紅イモや塩ちんすこう、シークヮーサーといった沖縄ならではの素材を活かしたフレーバーは、同社の象徴となっています。
直営店・FC店の運営: 沖縄県内を中心に、ブランドの世界観を体験できる直営店およびフランチャイズ店を展開。アイスクリームだけでなく、クレープやソフトクリームなども提供し、地元客や観光客で賑わっています。
卸売・ギフト事業: 沖縄県内の小売店やリゾートホテル、飲食店への商品供給のほか、全国の沖縄物産展やアンテナショップ、ECサイトを通じて、お土産やギフトとしての需要にも応えています。
【財務状況と今後の展望・課題】
第63期決算で88百万円の純利益を確保した背景には、コロナ禍からのV字回復を遂げた沖縄観光の活況が大きく寄与していると推察されます。国内外からの観光客数の増加は、直営店・FC店の売上、そしてお土産・ギフト商品の販売を直接的に押し上げ、同社の業績に強い追い風となっています。
貸借対照表において、総資産の半分以上を占める約16.5億円の固定資産は、品質の根幹をなす自社工場や、ブランド体験の拠点である直営店への継続的な投資の証であり、これが同社の競争力を支えています。
ブルーシールの最大の強みは、単なるアイスクリームメーカーに留まらない、「沖縄のアイコン」としての圧倒的なブランド力です。1948年に米軍基地内で創業したというユニークな歴史と、沖縄の戦後史と共に歩んできたストーリーは、製品に唯一無二の価値を与えています。
しかしながら、事業基盤が沖縄に集中しているため、その経済や観光動向に業績が左右されやすいというリスクも内包しています。また、乳製品をはじめとする原材料費の高騰や、激しい市場競争も継続的な課題です。
今後の展望として、ブルーシールが沖縄で築き上げた盤石なブランド力をテコに、県外および海外への展開を加速させることが期待されます。特に、全国の主要都市への直営店出店や、EC販売のさらなる強化は、新たな成長の柱となり得ます。また、インバウンド観光客を通じて高まった国際的な知名度を活かし、アジア市場への展開も視野に入るでしょう。
「沖縄のブルーシール」から「日本の、そして世界のブルーシール」へと飛躍を遂げられるか。そのブランド戦略と、沖縄の魅力を世界に発信する商品開発力に、引き続き大きな注目が集まります。
企業情報
企業名: フォーモストブルーシール株式会社(サッポロホールディングスグループ)
所在地: 沖縄県浦添市牧港5丁目5番6号
代表者: 村上 琢磨
事業内容: アイスクリーム、冷凍デザート等の製造・販売および、直営パーラー・フランチャイズ店舗の運営。沖縄の素材を活かしたフレーバーで、沖縄を代表するブランドとして知られる。