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#482 羽田エアポートライン株式会社 第3期決算 当期純利益 ▲57百万円

羽田エアポートライン株式会社の第3期(令和7年3月31日現在)の決算公告が、令和7年5月28日付の官報に掲載されましたので、その概要をピックアップします。

20250331_3_羽田エアポートライン決算

第3期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 183百万円 (約1.8億円)
負債合計: 18百万円 (約0.2億円)
純資産合計: 165百万円 (約1.7億円)
当期純損失: 57百万円 (約0.6億円)


今回の決算では、当期純損失として57百万円(約0.6億円)が計上されています。 資産合計は約1.8億円、負債合計は約0.2億円で、純資産合計は約1.7億円です。利益剰余金は▲130百万円(約▲1.3億円)とマイナス状態ですが、資本金295百万円(約3.0億円)により純資産はプラスを維持しています。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
羽田エアポートライン株式会社は、東京都大田区東急電鉄株式会社の出資により設立された第三セクターで、鉄道インフラの整備・保有を担う第三種鉄道事業者です。同社の公式ウェブサイトによると、主な事業は以下の通りです。

 

空港線蒲蒲線)の整備事業: 東急多摩川線京急空港線を接続する新路線「新空港線(通称:蒲蒲線)」の整備を事業の中核としています。具体的には、矢口渡駅から京急蒲田駅までの約1.7kmの連絡線を整備し、分断されている鉄道網(ミッシングリンク)を解消することを目指しています。


羽田空港へのアクセス向上: この新路線整備により、東急東横線東京メトロ副都心線、さらにはその先の東武東上線西武池袋線沿線から羽田空港へのアクセスが大幅に向上します。これにより、国際都市東京の競争力強化に貢献します。


地域活性化への寄与: 新たな人の流れを創出し、大田区内の移動利便性を高めることで、沿線地域の活性化やまちづくりを促進します。また、災害時の代替輸送ルートとしての機能も期待されています。


【財務状況と今後の展望・課題】
第3期決算で当期純損失が57百万円(約0.6億円)となった背景には、まだ鉄道の運行を開始しておらず、本格的な収益事業が始まっていない開発フェーズであるためと推察されます。現在は、事業化に向けた調査、設計、関係各所との調整、認可取得などの準備段階にあり、これらの活動に伴う費用が先行している状況です。貸借対照表において固定資産が約3百万円と非常に小さい点は、鉄道施設という巨大な資産をこれから建設していく、まさに事業の初期段階であることを示しています。

 

羽田エアポートラインが取り組む事業は、首都圏の交通インフラを革新し、羽田空港の国際競争力を高めるという点で極めて社会的意義の大きいプロジェクトです。特に、東京都大田区大手私鉄である東急電鉄がタッグを組む官民連携事業である点が大きな強みであり、プロジェクトの安定的な推進力となるでしょう。2025年4月には国土交通省から整備構想の認定も受けており、事業は着実に前進しています。

 

しかしながら、総事業費が約1,250億円にのぼる大規模プロジェクトであるため、今後の資金調達や建設コストの管理が重要な課題となります。また、2036年度末(令和18年度末)の開業を予定しており、長期にわたるプロジェクトを計画通りに進捗させていくための継続的な事業管理能力が求められます。現状の損失は、壮大な計画の実現に向けた先行投資と捉えることができますが、今後、建設フェーズの本格化に伴い、巨額の資金が必要となるため、安定した財務基盤の構築と、将来の収益化に向けた明確な道筋を示すことが不可欠です。

 

今後のマイルストーンとしては、環境影響評価手続き、都市計画決定、そして実際の建設工事着手などが挙げられます。羽田エアポートラインがこれらの課題を克服し、首都圏の新たな大動脈を完成させ、人々の移動と地域の未来に貢献するという壮大なビジョンを実現できるか、その戦略と実行力に引き続き注目が集まります。

 

企業情報
企業名: 羽田エアポートライン株式会社
所在地: 東京都大田区大森西一丁目12番1号
代表者: 玉川 一二
事業内容: 新空港線蒲蒲線)の整備を目的とした第三種鉄道事業東急線方面と京急空港線を結び、羽田空港へのアクセス向上と地域活性化を目指す。

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